広い広い回転寿司

　回転寿司というのも一種異様なものではある。ベルトコンベヤに載せられて店の中をくるくると回転する寿司を客が勝手にとって食べる。誰があんなものを考えたのかしらんが、どうも私はあの風景自体が嫌いだ。そもそも、普通に考えたらヘンではないか？なんとなく、養鶏場の鶏を思い出してしまう。ベルトコンベヤで餌が運ばれてきて、帰り際にコロッと卵を生むんである。最近は、寿司だけでなく、回転鍋などというものがあるそうであるが、だれが好き好んであんな方式で食べたいと思うんだろう？と思うが、これがこれで結構流行るっていうんだから世の中恐ろしい。そういえば、近所のスーパーの食品売り場にも回転寿司がある。スーパーの食品売り場の寿司コーナーがその場で食べられるようにしてあるんであるが、買い物客でごった返すスーパーの一角で、回転するベルトコンベヤーに向かって寿司を食っている姿は異様だ。


　で、だ。寿司というのは回転するベルトコンベヤーに載せて出さなくてはいけないと思うやつが出てきても不思議ではない。しかしながら、回転するベルトコンベヤーというのは当然ながら大きさなどに制約が出てくる。ドリフのもしものコーナー（古い！）ではないが、巨大な回転寿司というのがあったとしたらどうだろう？一周するのに何十ｍもあるような巨大な回転寿司があったらどうか？一周するあいだに寿司が乾いてカチコチになるんではないか？という心配もあろうが、なにより、ベルトコンベヤーの一番下流に座るとほとんど何も食えないのではないかと思う。

　ところが、そんな心配をよそに（？）広い広い回転寿司屋は存在した。そもそも寿司屋ってのはどこでもこじんまりとしているものである。ところが、そこは普通のファミレス並に広かった。それって普通に考えたらおかしくないか？と思うのだが、それまた、昼飯時なのにその店だけやけに空いているという理由で入ってしまった。店の入り口はそんなに広くはない。って、まあ、入り口であるからこんなもんであろう？しかし、居酒屋を彷彿とさせる赤い絨毯が延々と広がり、一歩店に入ったら、大広間のような広い座敷にテーブルが並べてある。まるで、温泉旅館の大宴会場のような雰囲気であった。それで、座ってメニューを見るも、飲み物以外何にも書いていない！「なんじゃこりゃ？」と思っていたら、店員がやってきて、「回転寿司になっておりますので、寿司はあちらの方からお好きなのをお取り下さい」という。見ると、その座敷のずっと奥の方になにやらベルトコンベヤーが回っている。あそこまでとりにいけっていうのか？（驚）と思ったけれど、まあいいや、と思い、ベルトコンベヤーに行ってみるも、これがなかなか何にも出てこない。なんか、子供のおやつみたいなプリンとかそんなもんはグルグルまわっていたが、肝心の寿司が滅多に出てこない。そのうち、ベルトコンベヤの最も上流付近に黒山のひとだかりが。って、あたりまえだ。こんなに広い座敷にあれだけのベルトコンベヤー、しかも滅多に寿司が出てこないとあっては。しかも、そこで運良く寿司をゲットできたとしよう。だが、問題はそこからテーブルまで延々と数十ｍを運んでいかねばならず、何往復もしたら非常に疲れる。それで、しまいには、遠くのテーブルからそのベルトコンベヤをじーっと見つめていて、何か出てきたら「出てきたぞ！」といって、ベルトコンベヤに駆け寄るといった具合に。
　もう、満腹になるどころか足が疲れるやら、腹が立つやら．．．店を出て、「イェッ、ダメダコリャッ」と「いかりや長介」のごとくつぶやく私であった。

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