伝説の歯科医
今回はちょっと趣向を変えて、歯医者さんの話にします。って、折角「飲食店」を楽しみにしていたのにつまんねぇ、とか、読者をなめんなよ〜とか、まあ、色々あるでしょうが、ま、これが飲食店なみに面白いんです。
現在、私は口の中にはかなり高価なものが入ってしまっています。何故にそんなことになってしまったかというと、昔治療したところがことごとく崩壊してしまったからなのです。１５年くらい前、新米の歯医者にかかってしまい、治療にえらく時間がかかったのに、その時治療した歯は、わずか数年でことごとく崩壊。それで、どうしようもなくなって、１０年くらい前にかかったのが今回の話しに出てくる歯医者さんです。
その歯医者はとある駅のすぐそばで、駅に広告が出ていました。私はその広告を見て、近くに歯医者があることは知っていたのですが、いまいち場所がよくわからなかったのです。ある日、夜、暗くなってからそのあたりを歩いたら、燦然と光り輝く看板を発見。それをみて、そこに通う決心をしたのです。まあ、看板があれだけ大々的に出てるくらいだから、ここなら大丈夫だろうという気はしてました。
さぞかし混んでいるんだろうなぁと思って行ってみたら、待合室に患者らしき人は一人もいない。そういえばここも、入り口のドアに誰かきたことを知らせるチャイムがあったので、その時点で「なんかおかしい」って気づけばよかったんでしょけど、まあ、最近の歯医者はどこでも予約制ですから、そんなもんかも、と思っていたのです。しかし、その受付と思われる場所にも誰もいない。「まさか?今日は休みか?」と心配になる私。しばらくすると、歯医者と思われるオッサンがでてきて「はい、いらっしゃい。どうぞ。」といって診療室の方に手招きする。で、治療台にすわって治療を受けることとなりました。
その治療台がまた凄い。歯医者の治療台っていえば、普通、紙コップかなんか置くと水が出て来てそれで口をゆすぐっていうのがあるじゃないですか。それがないんです。わたしゃ一瞬どうすればいいのかと戸惑っていたら、その歯医者のオッサンが、「ここを押して」といってなにかその治療台の脇にあるボタンを指さすのです。で、そのボタンを押すと、なんと噴水みたいに水が吹き出してくる。あの、よく駅なんかにある給水器ですね。そんな感じで出てきた水で口をゆすぐというシステムでした（あまり清潔とは言えんな（苦笑））。
治療が終わって診療室からでると、その受付(会計?)のところにまたその歯医者のオッサンが出て来て、「はい、300円ね」と。なんと、この人全部一人でやってるの?それで、300円払うと、薬をくれました。しかし、普通、どんな歯医者でも医者でも、薬っていったら薬袋にはいっているもんですよね。しかし、そこは一人で全部やってるくらいですからコストダウンは徹底しています。薬のおおきなシートから、2、3粒分をそのオッサンが手でちぎって、「はい」って渡してくれるんです。
歯医者って普通予約制になっているという意識があった私は、会計を済ませて、裸のまんまの薬を受け取った後（裸のままの薬だから、しまうのに困って、小銭入れにいれてました（笑））、「こんどはいつくれば....」ときいたら「いつでもいいですよ」とそのオッサン。私はさすがに不安になって、「明日でもいいですか?」ときいたら「いいですよ」という答え。「時間は?」ときいたら、「いつでも都合のいい時にきて下さい」だって。
それからしばらく私はそこの歯医者に通いましたが、適当な時間に適当に行っているにもかかわらず、待合室で人と出会ったのは2、3回。しかも、最も多い時で2人という状況でした。しかも、治療ったって、チョロッと2、3分やっておしまいよ。こりゃちょっとずつしか治療しないで回数で稼いでるな、と思ったけど、「もっと長くやってください」と言うわけにもいかず、随分長いこと通いました。だから、ほとんど毎日のように通ってたのに３ヶ月くらいかかったような（苦笑）。
そんでもって、患者がいないだけならまだしも、行ってみると、だ〜れもいないという事が何度か。治療室で、「すみませ〜ん、いませんか？」と叫ぶしまつ。そうすると、奥の方からオッサンが白衣をはおりながら、「はいはい」といって出てくるといった具合。そんなもんだから、寂しいのか、治療が終わっても、なんやかやと世間話しをしたり、たまに茶菓子なんか出してくれたりして（笑）
まあ、それはそれでいいんだけど、ホントにここで治療してて大丈夫か？と時々心配にはなりました。そういえば、レントゲン撮っても見せてくれないでコソコソやってるし、カルテもあるんだかないんだか（それらしいものを見てはいたが）。
それでもまあ、当時独身だった私としては、歯医者とはいえ、自分のために歯を治してくれるってのが妙に嬉しかったんではあります。って、さびし〜。
他が混んでいるのに、妙に空いてる飲食店にいくのも怖いけど、空いてる歯医者とか医者ってのはもっと怖いよなぁ。俺も勇気あるなぁ。