長い影
前回の散歩の後、急に高熱を出して寝込んでしまった。風邪をひいたのだが、これがかなり強烈で、２日間ずっと寝たきりで、３日目にようやく社会復帰出来た。だが、それから仕事が猛烈に忙しく、またぶりかえしてしまい、さらに２日間寝込んでしまった。そんなわけで久しぶりの散歩になった。日記も随分間があいてしまった。体調はかなり回復したが、動くとまだ少し息が苦しい。今日は無理をせず、軽く散歩道を巡るだけにしよう。午後、少し日が傾きかけてから、散歩道へと向かう。
しばらく見ないうちに散歩道はすっかり秋の色になった。日差しも秋の日差しだ。賑やかだった秋の虫たちは随分と静かになり、カネタタキのチッチッ．．．という音があちこちからきこえてくるだけだ。森の奥からはアマガエルがグェッグェツと時折鳴く。ヒヨドリがヒューイッと叫び、冬が近づいていることを思わせる。
今日はまだ体調が完全回復していないので、爪の谷の奥に向かうのはやめ、まっすぐお気に入りのくねくね峠道に向かう。くねくね峠道に入ると、木々の間から少しオレンジ色がかった光りが、長い影を作る。
木々の葉っぱが少し落ちたので、くねくね峠も少し明るくなった。そして、長い影を作りながら、太陽の光が奥まで差し込むようになった。くねくね峠道は秋の色に色づいてきた。道端にヤクシソウが黄色い花を沢山つけている。
くねくね谷のあぜ道を渡る。自分の長い影が田んぼに映る。畦の草はだいぶ乾いてきた。刈られても刈られてもすぐに青々とはえてきていた草たちも、季節を感じ取り、冬へと向かっている。田んぼに映る、森の長い影、そして光りの具合が秋の深まりを身体にしみこませてくれる。
病み上がりでゆっくりとゆっくりと歩く私。それでも、少しぜいぜいと息を切らしながら。散歩道は暖かく包み込むように、私を迎えてくれる。カラスがカァ〜、カァ〜と長く鳴きながら頭上を舞う。
西のメイン通りを出て、東のメイン通りにはいる。だいぶ日が暮れてきた。谷津の真ん中、ススキとセイタカアワダチソウの縞模様が美しい。風が吹くとやわらかくゆれる。少しずつ寒くなっていく季節に、綿のようなその草原が暖かさを感じさせてくれる。
道端をスルスルとシマヘビが通り抜けようとしていた。あ、ちょっとまって！といつも生き物を見つけるとそうして声をかけているが、今回も思わずカメラを構えるまで、「ちょっとまってね」と声をかけた。シマヘビは少し進んでは止まり、少し進んでは止まりと動き、土手の窪みの中に入っていった。みると、こちらを見ている。
大きな瞳が愛らしい。パチリと写真を撮る。散歩道ではいろんなヘビに出会ったが、シマヘビは初めてだな。このところヘビに出会うことが多いが、冬の支度に忙しいのだろうか？ありがとう、バッチリ撮れたよ。また会おうね。
シマヘビに別れを告げ、また、ゆっくりゆっくり歩く。この２週間、散歩が出来なかったので、こうして短時間でも散歩できることが嬉しい。今日はこのへんにして帰ろうか。それでも随分歩いたな。爪の谷のあたりまできて、爪の谷を見ると、田んぼのわきの藪がだいぶ刈られ、刈った木々の枝を田んぼに敷いている。冬の支度、そして、やがてくる春のために。
こうして刈られた草原は、明るい草原になり、そこに、スミレやタンポポなど春の野草が咲き乱れるのだ。
今日は短い散歩だった。散歩道は少し静かになった。私もしばらく休んで以前より静かな気持ちになった気がする。静かに秋が深まっていく。