リンドウ
昨日は良い天気だったが子供の参観日などで疲れ果て、とても散歩にいくエネルギーが残っていなかった。午後、録画していたテレビ番組を見ていたら眠くてしょうがなくなった。少し昼寝しようと思って寝たらなかなか起き上がれない。夜、「もののけ姫」のビデオを見た。いや、前日にテレビ放送があったのだが、見ることができなかったので、随分前に買って何度か見たビデオをまた見ようと思ったのだ。散歩道プロジェクトを始めた前日にテレビで「もののけ姫」を見たことを思い出した。
昨夜は夜遅くにザッと雨が降った。短時間で止むだろうと思っていたが、意外と長い時間降ったように思う。朝起きたら、すっきりと快晴で、地面がしっとりと濡れていた。部屋の窓のところに丁度、枇杷の花が咲いているが、このところ、ヒヨドリやメジロがきて花をつつく。覗き込むと、サッとどこかに飛んでいってしまうが、別にとっつかまえたりしないんだけどね。
そんな風景を見ながら久々に朝の散歩にいってみよう、そう思った。１０月の終わりに風邪をひいて以来、どうもすっきりしない体調が続いているが、歩きはじめると、足は意外と軽い。少し湿った空気が気持ちいい。
散歩道の入り口のあたりで、小鳥がさえずりながら近くの枝を飛びわたっている。なんだろう？と思ったら、アオジだった。久々にみるアオジだ。少しずつ鳥も渡っていったりわたってきたりするものがいる。先日からジョウビタキはなんどか見た。ツグミはまだだ。ツグミはまだ遠いどこかで過ごしているんだろうか？などと思ったりする。
爪の谷に入っていくと、オオアオイトトンボが飛んだ。去年はこの時期、二匹仲良く繋がっているオオアオイトトンボを沢山みたが、今日はどういうわけか、みなさん、お一人様だ。これからなのだろうか？写真を撮ろうと近づくと、フワフワっと飛んで逃げる。しかし、遠くに逃げたりしない。フワフワっと、ちょっとだけ逃げる。カメラをかまえると、大きな眼でこちらをうかがっているようにも見える。
そういえば、最近アカガエルの沼にいっていないな。そう思ったので、いってみることにした。あいかわらず葦が生い茂り、先に進むことが出来ない。まわりの山はきれいに色づいて、葦もだいぶ枯れてきた。そうして葦が枯れはて、冬がやってきて、まだ寒いうちにアカガエルが産卵する。もう先日からアカガエルの姿はまったく見られなくなった。これからは少し静かな冬だ。そして、すぐにまた賑やかになる。アカガエルの冬は短い。
アカガエルの沼から引き返して、沼の手前の林を抜けると、なんと、爪の谷入り口付近の田んぼに朝陽がさしこんで、それが田んぼに湯気を立たせていた。差し込む光がその湯気のおかげでカーテンのようになっている。雨上がりの朝ならではの風景だろう。
西のメイン通りを進む。賑やかだった道端の花はほとんど終わり、枯れた草花の先には実をつけているものがみられる。雨上がりということもあり、湿った枯れ草の香りがしてくる。そういえば、散歩道プロジェクトを始めた頃は、午前中によく散歩にいったものだ。まだ寒い頃で、湿った枯れ草の香りが漂っていたものだ。
花は随分と寂しくなったなと思いつつ、歩いていると、道端にひときわ存在感を示しているものがあった。リンドウだ。それは少し薄暗い木のトンネル道の道端にあった。なんとなくぼーっとしながら歩いていたのだが、花が「ここだよ」といわんばかりに点滅しているようにさえ思えた。
思わずしゃがんで見入ってしまう。およそ、ほとんど他の花が終わってしまった今頃、ふと現れるリンドウ。そして、春まだ他の花がほとんど咲かない寒い頃に、これとは違うがフデリンドウやコケリンドウといった小さなリンドウが咲く。花の季節の最初と最後を違うリンドウが飾ってくれる。どちらも青紫の花で、ひときわ目立つ。去年はうちの庭に沢山のリンドウが咲いた。今年は庭の土を掘り返してしまったこともあり、咲かないかと思っていたが、それでも咲いてくれて嬉しかった。リンドウはポツリポツリと咲くが、その存在感は大きい。
西のメイン通りを抜け、何気なく神社の方に歩いてみた。神社の参道のもみじが素晴らしかったのをなんとなく思い出した。いってみると、もみじは意外なことに、まだかなり青かった。それでも、微妙な色がとても美しい。長い石段を少し息を切らしながら上る。
神社にお参りして、裏手の方に出ると、少し前までは鬱蒼と木が生い茂っていたところが、根こそぎになったところがあり、いままで見えなかった遠くの風景が見えるようになっていた。その木を切り倒したところの近く、ゴルフクラブを持ち、スイングをしている人がいた。時々散歩道をゴルフクラブを持って歩いている人がいるが、どういう気持ちで散歩道の自然を見ているのだろう。ひっそりとさくリンドウは見えているだろうか？私はちょっとがっかりして引き返し、石段を降りた。降りる途中で虫食いがとても不思議に美しい落ち葉を見つけた。
完全に私の日常となっている散歩道。そろそろ冬がやってくる。短い冬だが、冬もまた冬の美しさがあり、楽しさがある。過ぎ去る秋は寂しいものかもしれないが、静かな冬も待ち遠しい。